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よい企業の新しい条件?「ESG」とは

●投資の視点は「儲かるか」から「ESGに配慮しているか」へ

 パリ協定から離脱し、地球温暖化に懐疑的な発言を繰り返すトランプ大統領。この100年で最も寒い感謝祭になりそうなことに触れて「Whatever happened to Global Warming?(そういえば、温暖化はどうなったんだ?)」とツイッターに書き込みました。

 しかしその直後、米海洋大気局(NOAA)などがまとめた報告書では、温暖化は確実に進行しており、アメリカもそれによって、最大で数十兆円にも及ぶ経済損失を被る可能性があると発表。大統領の論理的とは言い難い言動とのギャップを浮き彫りにしました。

 今、こうした温暖化などの環境問題やさまざまな社会課題と経済活動の関わりを企業に問う「ESG」が話題になっています。

 ESGは「環境」(environment)、「社会」(social)、「ガバナンス」(governance)、の頭文字を取ったものです。投資家は今、目先の利益ではなく、ESGを意識した経営を行う企業への投資を増やしていこうとしています。

環境では、脱炭素や再生可能エネルギー活用による温暖化抑制や生物の多様性保全など、社会では女性の社会進出や人権、地域貢献など、ガバナンスでは、法令遵守や社外取締役の在り方などが具体的なテーマとなります。

これまでは、短期的により多くのリターンが得られる投資先に資金を振り向けるのが当たり前でしたが、数十年先を見越して「社会課題の解決に寄与し、組織として健全で持続的成長が可能な企業に投資する」のがESG投資の考え方といえるでしょう。

 いずれも対応は簡単ではありませんが、視点を変えればチャンスにもなります。何しろESG投資の投資残高は世界で22兆8900億ドル(約2500兆円)にも上り、全世界の投資額の約3割を占めるとの推計もあるほどで、その勢いはとどまるところを知りません。日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)をはじめ、運用資産が世界の上位を占める欧米各国の年金基金や、ING、アリアンツのような大手保険会社の他、数多くの国際企業がESG投資の実施を明らかにしています。

 こうして大きな存在感を示すESGですが、もともと欧米では、武器やアルコールを扱う企業を投資対象から外す「SRI(社会的責任投資)」という手法が定着していました。そして1992年の地球サミット以降は、環境問題が投資に関連付けられるようになりました。

 その後2006年には、当時のコフィ・アナン国連事務総長の提唱により、「PRI(責任投資原則=Principles for Responsible Investment)」という考え方が生まれます。PRIでは、四半期ごとに出てくる財務情報ではなく、もっと長期的に社会や環境に与える影響、持続可能性の有無を判断基準とするよう投資家に求めたのです。

 その後PRIは多くの機関投資家や金融機関、企業に受け入れられ、賛同する機関全体の運用残高は約9兆ドル(約995兆円)にもなります。ESG投資は、こうしたPRIをさらに具体化したものといえます。

●ESG投資はサプライチェーン全体に影響

ただ、よいことばかりではありません。新たな投資を呼び込める可能性がある一方、今後さらにESGの視点が重要視されるようになれば、対応が遅れた企業は資金調達に支障を来したり、発注先から外されたりするなど、企業活動そのものが危うくなる可能性すらあるからです。

また、影響は対象となる企業だけにとどまりません。ESG投資を受ける企業は、調達先の企業が環境問題や差別、劣悪な労働環境といった問題を抱えていないか、サプライチェーン全体に目を光らせる必要があります。

 フランスの大手保険・金融機関であるアクサグループは、2020年までに12億ユーロ(約1500億円)の環境投資を行うと発表しました。一方で売り上げの30%以上を石炭に依存している企業などへの投資を引き上げる「ダイベストメント(投資撤退)」を宣言しました。

 アクサのような投資方針を示す組織は、世界的に増加傾向にありますが、日本のESG投資は始まったばかりです。世界のESG投資額のうち、日本の運用額は3.4%程度にすぎず、世界の流れに10年は遅れていると言われています。ESG投資でも大きなテーマとなっている脱炭素化に向けた投資も取り組みは限定的で、逆に新たな石炭火力発電所が計画されている状況です。

 日本は10年遅れのまま取り残されていってしまうのでしょうか? そうともいえません。ESGに積極的に関与している企業の製品を選ぶなど、私たちも企業の取り組みに間接的に関わり、積極的に応援することができるからです。

(エコイスト編集部)

2019.04.17