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FITはもう古い? 環境先進国ドイツで進むFIP導入とその可能性

 パリ協定に先立って日本が世界に宣言した、2030年までに2013年比でCO2などの温室効果ガスを26%削減するという目標を達成するためには、日本のCO2排出量の約4割を占める発電時の排出をいかに減らすかが大きな課題です。だからこそ、太陽光発電や風力発電など、CO2を出さない再生可能エネルギー(再エネ)の導入拡大は必須といえます。

 再エネを増やす目玉として2012年に日本で導入されたのが、電力会社に再エネを一定の価格で買い取ることを義務付けたFIT(フィード・イン・タリフ=固定価格買取制度)でした。制度導入後、太陽光発電の発電量が飛躍的に伸びましたが、同時に、高く設定されている買い取り価格により、消費者の負担が増加しているなどの批判が出るようになりました。

 一方、世界の先陣を切ってFITを導入したドイツは2017年、FITから、市場原理を活用することでより効率的に再エネ導入を図るFIP(フィード・イン・プレミアム)へ移行しました。今後はFIPを使った新たな電力システムの導入も進むと見られています。

 FITにはどんな問題があるのでしょうか。そしてドイツはなぜFIPに移行したのでしょうか。

 FITは、再エネで発電した電気を一定の価格で買い取ることを大規模な電力事業者に義務付けて、再エネの積極的な導入を目指した仕組みです。初期の再エネはコスト高だったため、電力会社が買い取る価格も小売価格より高めに設定されています。この差額分は1kWh当たり数円の賦課金として、通常の電力料金に上乗せされて利用者から徴収されます。この賦課金が、冒頭で触れた批判の対象になりました。

 FIT導入によって太陽光発電は急増。日本の年間発電量は導入前の2011年に比べて、2017年には約11倍に伸びました。政府が目指した方向に進んだと見ることができます。

 この間、政府が決める買い取り価格は下がり続けているのですが、導入量の拡大で賦課金が上がり、2012年度は1kWh当たり0.22円だったものが、2017年度には2.64円になりました。総額で見ると2017年度に2兆1000億円に達し、その金額の大きさが目立つようになってきました。FITが再エネの増加に貢献したのは間違いありません。制度の不具合があれば、修正していけばよいのです。そんな修正を進めているのが、環境先進国のドイツです。

 ドイツでは、太陽光発電パネルの大幅な価格下落もあって、家庭向けの小売り電力より再エネの発電コストが低くなったため、過剰な保護によって市場がゆがむおそれがでてきました。黙っていても電力会社が買ってくれるのでは、市場競争力は育ちません。

 そこでドイツが2017年に導入したのが、再エネの電気を電力の卸市場で直接販売する際に、買い取り価格にプレミアムと呼ばれる補助金を上乗せして再エネ事業者に支払う「FIP」です。市場価格は需要と供給のバランスで変動するため、FITに比べて補助金を削減できる可能性がある他、電力市場での競争促進も期待されています。

 FITでは、電力が供給過剰になっても高い価格での買い取りが大手電力会社に義務付けられますが、FIPなら市場原理によって販売価格が下がるため、再エネ事業者が過剰に供給することがなくなり、プレミアムの総額が削減されます。反対に、電力供給量が不足しているときには電気を高く売ることができるため、再エネ事業者の利益も増えます。需給バランスをうまく見極めることができれば、再エネ事業者は売り上げを増やすことができるのです。

 とはいえ、日本でFIPを導入するには、発電、送電、配電を自由化する必要があります。道のりは少々長いかもしれません。

 また、2018年10月に、九州で太陽光発電の発電量が増加して一時九州電力が受け入れを抑制したように、需給調整能力の不足も課題の一つです。九州で増えた発電量を他の地域に振り向けることができればいいのです。

 それでも、FITを端緒として増加した再エネを長期的に成長させていくことは、日本の将来にとって欠かせません。各国の事例に学びながら、日本のエネルギー市場を活性化していくことが求められています。

(エコイスト編集部)

2019.06.26