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太陽光発電への期待と課題

【再生可能エネルギ-の時代】
 世界は温室効果ガスのゼロエミッション、再生可能エネルギ-の主力化等に大きく転換しつつある。世界エネルギ-機関(IEA)のシナリオでは、2040年までに増える電源の3/4は再エネとなる。コストは急減し、大規模火力発電設備と遜色のない水準まで下がっており、このトレンドは今後も続く。まさに新エネルギ-革命である。エネルギ-の主役が石油・石炭等の化石資源から太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス等の再生可能エネルギ-に移行していく。
 再エネ電力の魅力は、生成方法が多岐にわたることだ。水、風、潮等の運動エネルギ-をそのまま利用する、バイオマスを燃料として利用する、太陽エネルギ-を多様に利用する。太陽熱は温水生成や熱媒体を通した蒸気発電のエネルギ-源となる。太陽光は半導体を利用した化学反応によりいわゆる太陽光発電を行うが、これがエネルギ-世界を席巻しつつある。半導体は、いわゆるムーアの法則が当てはまる世界で、生産量に対応してコストが下がる世界である。

【太陽光発電はどうして革命的か】
 再エネは新エネルギ-革命の最大の当事者である。砂漠等にパネルを敷き詰める大規模設備もあるが、太陽光発電は需要家の敷地内に、屋根に設置できるという点で革命的である。いわゆるオンサイト発電であり、これが低コストとなり家電や事業設備と同じ動機で設置されるようになると、その影響力は大きい。プロシュ-マ-(生産消費者)登場の立役者になる。消費者は、消費だけでなく、生産、貯蔵、販売の機会を通じて、エネルギ-について省エネを含めて総合的・能動的に考え行動するようになる。購入電力や蓄電池のコスト、CO2の価値等を考える。EV、PRV等の電動車の所有とも相まって太陽光発電の使い勝手がよくなり、災害時に利用できる価値も高まる。再エネ100%調達を目指すグローバル企業も、オンサイトや近場のオフサイトを利用した発電事業を行うようになる。
 これは電力をはじめエネルギ-システムの改革につながる。大規模・集中・長距離・一方通行の従来型システムから小規模・分散・短距離・双方向の分散型システムへ転換する立役者となる。砂漠・草原地域等人口密度の低い地域、電化が遅れた途上国等では、送電線等のインフラ投資を要さない分散型システムは魅力的であり、新時代への適応がむしろ速いとも言われる。携帯電話が固定電話を駆逐するようなイメージである。こうした技術は、破壊的技術(ディスラプティブイノベーション)とも称される。

【太陽光の課題を克服して主役継続へ】
 一方、課題もある。内外価格差はまだ大きい。設置可能な屋根や遊休地があれば比較的容易に参加できる。発電は公益性の高い事業であるが、投機目的の参入者も出現する。低い電圧への設置数が非常に多いこともあり、景観を含む環境面で立地地域との軋轢が生じる。太陽光の開発量が多く、電源バランス上の懸念も出ている。
 このような状況下、日本政府は、このところ太陽光の拡大を抑制する動きに出てきている。買取価格の急激な引き下げ、入札制の導入、FIT認定後稼働までの期間設定等である。また、来年度より、小規模事業に対する自家消費要件を導入する予定だが、こうした事業環境に慣れるまで時間を要するであろう。これまで普及の主役であった低圧領域や大規模事業の新規案件は、急速に減りつつある。 
 事業側も反省すべき面があることは否めないが、電気事業法上の課題や送配電線の空き容量の問題でもある。内外価格差はエネルギ-全体の問題である。卸市場価格は欧米ではkWh当り4~5セントであるが、日本は10円程度である。2020年の事業用太陽光FIT価格は12円に下がるが、これはかなり低い水準だといえる。エネ支援策を急激に見直すことで、開発意欲を弱めることになりかねない。日本はまだ再エネは普及しているとは言えず、脱炭素目標に向けて太陽光の更なる普及は不可欠である。これから導入される低コストの設備はエネルギ-コスト低減に寄与する。太陽光はエネルギ-の主役であり続けることに変わりはない。

エネルギ-戦略研究所株式会社 取締役研究所長
(京都大学経済学研究科特任教授)
山家公雄

〈プロフィール〉
山家 公雄(やまか・きみお)
1956年山形県生まれ。東京大学経済学部卒業。1980年に日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。電力、物流、鉄鋼、食品業界などの担当を経て、環境・エネルギー部次長、調査部審議役などを歴任。2009年よりエネルギー戦略研究所所長。2014年4月より京都大学大学院経済学研究科の特任教授。著書として、「テキサスに学ぶ驚異の電力システム」「第5次エネルギー基本計画」を読み解く」など。

2020.03.05