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風力発電への期待と課題

【再エネ革命を主導する風力】
 再エネ普及が現実となったは、2000年にドイツが発電量に応じて一定の価格で買い取られる固定価格買い取り制度(FIT:Feed in Tariff)を導入し、EU諸国、そして、世界に伝播したことの影響が大きい。先陣を切り、牽引したのは風力である。すでに普及していた水力以外では、潜在量が大きくコストは相対的に低い。従来の大規模発電に比べてシステムがシンプル、設置が容易、小規模設置可能等の特徴があり多くの事業主体が誕生し、再エネ事業への支持が広がっていった。FITの仕組みが分り易いこともあり、地域住民が事業主体となるケースが多く「エネルギ-民主主義」という言葉も登場する。
 2010年前後に、EUは本格的な温暖化対策に舵を切るが、陸上風力普及に加えて洋上風力のコストが下がり普及し始める。2011年の福島第一原子力発電所事故、2015年のパリ協定採択の影響をも受け、原子力や石炭火力に代わる大規模で安定出力が期待できる洋上風力に注目が集まる。風力発電の出力は、風速の3乗、羽根の長さの2乗(風車面の1乗)に比例する。風速は上空にいくほど強くなる。従って、風車が大きくなるほど出力が増し設備利用率も高くなることから、技術開発の主眼は大型化となる。洋上はこれを可能にするが、最近一機当たり出力1200kWの製品が登場した。また発電所の大規模化により出力が安定化するが、最近130万kW発電所も登場。洋上の保守管理は往復時間や作業員に制約があることから、故障しないシステムもポイントとなるが、膨大な稼働データを駆使した実機試験により、故障の事前予測力が高まり、稼働率は飛躍的に上がった(故障率は下がった)。
 このような工夫を重ねた結果、欧州の洋上風力発電コストは急激に下がってきた。2016年にはMWh当り100ユーロ(10セント/kWh)を切り、2017年には50~60ユーロの事業も出現し、最近は卸市場価格程度の入札価格になる例も出てきてる。

【日本の風力開発停滞は世界の不思議】
 一方日本は、まだ380万kWの導入量に留まっており(2019年9月末時点)、海外のエネルギ-関係者からは「一桁間違っているのではないか」「世界の不思議」と言われている。長い海岸線、広大な領海や山地を有する日本は、膨大な風力潜在量を誇るが、これを活かしてこなかった。政策的に普及させる意思がなかったとも言われる。
 日本の風力の黎明期は早く、1997年に始まった「電力会社の自主的な長期固定価格買取」と建設補助金とを組合わせた支援制度まで遡る。これは2003年に電力会社が小売販売量の一定割合を再エネにすることを義務付ける「RPS制度」に引き継がれたが、割合は1.35%と低く、電力会社が価格支配力を握り「再エネを普及させない制度」と言われた。また、不安定電源としてわずかな送電接続しか認められなかった。姉歯事件(耐震偽装)を機に2006年に建築基準法が改正された際に、周囲に何もない風力発電も耐震基準が適用され、建設コストが高まった。2012年7月に「FIT」が導入された際は、制度切り替えに要した1年間は補助金が打ち切られ、投資が止まった。2012年10月には、環境アセスメント法の対象となり、以降4年間はアセスに時間を費すこととなり、その後は送電線空き容量不足に見舞われた。風力業界は「節目節目で制約がかかった」と述懐する。
 どうして風力は目の敵にされたのか。①再エネの中ではコストが低く警戒された、②適地が北海道、東北、九州に偏在しており、大規模導入により電力会社間流通が拡大すれば9電力体制に影響が及ぶ、③風力発電業界は政治力が強くない等が考えられる。

【今度こそ、風力】
 しかし、こうした制約にも拘らず、風力関係者は、明日の主力化を信じて地道に開発を続けてきており、現在稼働中とFIT認定済みとで約1000万kWに達する。これは、政府の2030年目標量と同一である(これは低すぎるのだが)。また、環境アセス中の案件は陸上で約2000万kW、洋上で約1400万kWある。洋上風力は2018年11月に新法が成立し、一般海域で30年間専用・操業できることになり、地区指定や事業者採択のルールも定められ、各地で地区指定を目指した活発な動きが生じている。筆者は、2013年に拙著「今こそ風力」を上梓したが、今度こそ風力の普及が実現すると信じている。そうでなければ、政府公約の2050年までに温室効果ガス8割削減の実現は不可能である。

エネルギ-戦略研究所株式会社 取締役研究所長
(京都大学経済学研究科特任教授)
山家公雄 

〈プロフィール〉
山家 公雄(やまか・きみお)
1956年山形県生まれ。東京大学経済学部卒業。1980年に日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。電力、物流、鉄鋼、食品業界などの担当を経て、環境・エネルギー部次長、調査部審議役などを歴任。2009年よりエネルギー戦略研究所所長。2014年4月より京都大学大学院経済学研究科の特任教授。著書として、「テキサスに学ぶ驚異の電力システム」「第5次エネルギー基本計画」を読み解く」など。

2020.03.19