持続可能社会をみんなで

menu
English/Japanese
ecoistecoist

元・環境先進国の日本のこれから

●人類共通の課題である環境問題とCOP

一昨年の2017年8月、アメリカのトランプ大統領がパリ協定離脱の正式表明を行い、全世界的な物議を醸したことは記憶に新しいところですが、物議を醸した根底のパリ協定とは何かをご存知でしょうか。今回は環境問題が取りざたされる際に必ず出てくるワードであるCOP(コップ)とパリ協定についておさらいをしたいと思います。

通称「地球サミット」と呼ばれた「国連環境と開発に関する会議」が1992年6月にブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催されました。地球温暖化や酸性雨など、地球規模で対策が必要となる環境問題を人類共通の課題とみなし、「持続可能な開発」を達成するために環境と開発を両立させることを目指して、世界172か国(ほぼすべての国際連合加盟国)の代表が協議を行いました。そして、この会議のなかでも重要課題とされたのが、温室効果ガスによる気候変動というテーマでした。最終的には、温室効果ガスの排出を減らしていくことが「それ自体経済的に正当化し得ること及びその他の環境問題の解決に役立ち得ることを認め」つつ、「現在及び将来世代のために気候系を保護することを決意」したということで、「気候変動に関する国際連合枠組条約」が採択されました。日本を含め、サミット開催中に115カ国が署名を行い、その後、本条約に基づき、締約国会議(COP=Conference of the Parties)が開催されています。一般的に言われているCOP〜とは、毎年開催されているこの気候変動に関する締約国会議の総称ということになります。

そして、パリ協定が採択された締約国会議はCOP21と呼ばれ、京都議定書が採択されたCOP3から18年後の2015年12月に開催されました。京都議定書が温室効果ガスの最大の排出国であったアメリカが参加しなかったことや排出削減の義務を負っていたのが先進42カ国・地域だけであったことなどから世界的な削減は進みませんでした。その結果と共に、地球温暖化防止に対する世界的な関心の高まりが大きくなったこともあり、新たな取り組みとして採択されたパリ協定は2018年12月時点で180カ国が批准をしています。

京都議定書ではできなかった「全員参加」を達成したことに大きな意義があるといわれているパリ協定の特徴は以下となります。
1)気温上昇を産業革命前に比べて「2度未満」に抑える(島諸国の希望を入れる形で温度上昇を1.5度に抑える努力をすることも明記)
2)長期目標として、今世紀後半に温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにする
3)すべての国が自主的に目標と達成方法を定め、5年ごとに見直す(目標年は2025年または2030年)
4)見なおしの際はそれ以前より高い目標を掲げる
5)気候変動の影響で損失と被害が生じた国々を救済する国際的仕組みを整える6)各国の取り組みや支援状況を国際的に検証する仕組みの構築

こうしたパリ協定を実際に動かしていくために、2018年のCOP24(ポーランドのカトヴィツェで開催)では、5年ごとの進捗状況の検証方法や透明性の確保、先進国から途上国への支援をどのように算定するかなど、詳細な実施方針が決められました。

パリ協定からの潮流の動き

2018年12月19日付の日本経済新聞が、<「1.5度」と「脱石炭」問題 COP24で浮き彫りに>という興味深いレポートを掲載しました。1.5度の目標については、「国連気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)や「国連環境計画」(UNEP)が、現状のパリ協定の目標では気候変動を抑えられないというレポートを、COP24の直前に発表したことが影響していると記述。また、脱石炭の動きは、「COP23開催時に結成した『脱石炭火力国家連合』(PPCA)の『成長ぶり』には目を見張った」という表現となっています。記事によれば、昨年はPPCAに参加したのは27組織(企業や自治体など)だったのに対し、今年は80に増えたそうです。日本では今なお石炭火力の増設が検討されていますが、世界的な動きを見ると今後の道は平坦ではないということが窺えます。

本コラムの冒頭に書きましたトランプ大統領のパリ協定の離脱表明について、今後の実効性を危ぶむ声が日本では聞かれることもありますが、2017年10月24日のロイターは、米国企業は影響を離脱の受けていないことを報じています。記事によれば、ロンドンに本部を置く非営利団体「CDP」が気候変動対策などの取り組みで高い評価をした企業のうち、5分の1は米企業が占めていて、前年と変わらない水準であったということ。また米国では、カリフォルニア州、コロラド州の州知事や、アップル社、JPモルガン・チェース社などがパリ協定離脱を批判する声明を発表。地域によってはパリ協定に則った形で温室効果ガスの削減に努力する姿勢を維持していると記述されていました。

かつては環境先進国として環境技術の開発を世界に先駆けて行ってきた日本ですが、温室効果ガスを「30年までに13年比で26%削減する」という目標の達成も難しいと見られています。世界最新鋭とはいえ、CO2排出の多い石炭火力の新設に依存せざるを得ず、太陽光発電、地熱など再生可能エネルギーも世界に比べ遅れています。次世代エネルギー社会に向けた世界的な潮流の動きのなか、日本はどこに向かっていくのでしょうか。

(エコイスト編集部)

2019.03.18