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“ESG投資”って? ~持続可能な社会への移行を促進する投資とは~

この夏は暑かったですね。昔は夏といっても、東京でこんなに暑かったことはないと思います。このように気温が平年より高いと感じると、頭をよぎるのが“地球温暖化”という言葉です。この地球温暖化をはじめとして、世間では“環境問題の解決”が叫ばれています。ではどうしてこのような問題が起きたのでしょうか。

歴史的に見ると、産業革命以後の技術の進歩はめざましく、経済が成長し、人々の暮らしが豊かになりました。その豊かさを追い求める過程で、大量生産・大量消費・大量廃棄に依存した社会システムが構築され、人口の増加も相まって、“ヒト”が消費する天然資源は増える一方、環境汚染が地球全体で拡大してしまったのです。地球温暖化も、人類の活動に伴う化石燃料の使用増加や森林伐採により、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの増加が原因とされています。様々な気象データで見ても、産業革命から足元までの100年で地球の平均気温は約0.7℃上昇したとされ、このままの経済活動を継続すれば今世紀末に平均気温は4℃上昇すると言われています。これを地球環境や私たちの生活が持続可能な2℃以内の上昇に抑えるためには、世界で排出される温室効果ガスの量を2050年に2010年と比較し40~70%削減、今世紀末にはゼロにしなければならないとされています。現在の経済活動を考えると至難の業ですが、世界中の政府や企業、人々がこの問題を“気候変動”と呼び取組む背景には、このような地球環境と私たちの生活の「持続可能性の危機」があるのです。

このような私たちの持続可能性の危機の中で、投資の世界を中心に出てきたのが、「ESG」という考え方です。お金の力、とりわけ企業への投資は経済成長を後押ししてきましたが、短期的な利益を追求し、地球環境や私たちの未来を脅かすような経済の在り方ではこの社会は持続しない、という考え方です。Environment(環境)・Social(社会)・Governance(企業統治)の3つ英単語の頭文字をとって「ESG」と呼ばれるようになりました。こうした観点にちゃんと配慮しながら利益を出し、成長する企業に投資をしよう、というのが「ESG投資」です。では、それぞれの観点の説明をしましょう。

“E”は、先ほど書いたような気候変動への取組みや、水や森林など天然資源の利用に配慮する、という観点です。これは、資源の効率的な利用等を通じてコスト削減に寄与します。

“S”は、性別や国籍、人種で就業や昇進の差別をせず、従業員に安全で、それぞれの個性によって活躍できる職場を提供する。また原材料の調達や製造などで、会社が事業を通じてかかわっている地域社会を大切にする、というような観点です。これは優秀な人材の獲得や安定的な事業活動に効果を発揮します。

“G”は、会社の意思決定を行う取締役会のメンバーに、その企業の外部の人材を加えたり、女性や外国人を登用することによって、株主とともに中長期的な企業価値向上を図る一方、経営への監視を高め、不祥事や誤った経営判断を防止するという観点です。これは多様な視点を加えることによって経営の透明性を高めるだけでなく、優秀な人材が経営の意思決定に加わることが、事業機会の拡大やリスク防止に役立つという考えです。

どれも、より良い世界の実現だけでなく、企業価値向上につながる非常に素敵な視点だと思いませんか。

しかし、こういう“良いこと”って短期的には手間もお金もかかりそうですよね。しかし、長期的な視点をもって、社会の持続可能性に配慮しながら顧客や自らの利益の拡大を図る。この社会の持続可能性と企業価値の向上の2つを両立させることは可能であるとの考え方で投資をするのが「ESG投資」です。

足下では新型コロナウイルスの感染拡大が世界中で大きな脅威となっています。世界中の人と物の移動が制限され、経済は停滞し、人々の暮らしに大きなマイナスの影響を与えています。環境への負担は幾分減ったかもしれませんが、私たちの暮らしに新たな持続可能性の危機をもたらしています。感染拡大防止と経済活動の両立は手探りの状況ですが、ポストコロナの社会を考えるにあたっては、単に元の世界に戻るのではなく、環境や社会に配慮しながら経済活動を拡大していくことが重要です。このような持続可能な社会の実現を促進するために、ESG投資が大きな役割を果たすと言えます。

 

<執筆者プロフィール>
池畑勇紀
アセットマネジメントOne株式会社 運用本部 責任投資グループ ESGアナリスト
株式アナリストや、株式・債券のファンド運用などの業務を歴任ののち、2017年7月より同社株式運用グループにて外国株式運用を担当。2018年9月より同職にてESG投資にかかる企業へのエンゲージメント(企業価値向上を目的とした投資先企業との対話)業務等に従事。

2020.10.09