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「日本版」容量市場の失敗

完全な電力の自由化を行うために、今年から、これまでの電力事業者は発電、送配電、小売という事業を分離、別会社化を行うとなっていました。

新たに参入した電力小売事業者は、自社で販売する電力を相対取引(元々の電力事業者の発電部門との個別取引)、もしくは、卸取引市場で金融同様の取引によって調達し、消費者により安価に電気を供給すべく自社努力を行っています。

卸取引市場は相対取引と異なり固定価格ではないので、市場に供給する発電会社としては、巨額の投資と長いリードタイムを要する電源投資に対して消極的になるのではという見方も出てきました。発電所を閉鎖してしまい、供給量が減少、結果的に電気料金が高騰してしまう。この流れを防ぎ、発電事業者に安定したお金が入るシステムをということで考えられたのが「容量市場」というものです。

「容量市場」は、現在使う電気ではなく、数年後(日本の場合は4年後)に必要とされる電気を供給する能力を確保・入札する市場です。 その必要性を巡る論議はあったものの、2020年日本では容量市場が創設されました。しかし、2020年9月14日の第1回の入札結果は、先行する海外でも類を見ない高額な約定価格となりました。

これにより、2024年度には応札した発電所は総額1.6兆円もの支払いを受けることになります。この1.6兆円は小売事業者が負担する一方で、発電設備の8割は旧来の電気事業者が所有しています。 この容量市場による落札結果・負担金により、卸電力取引市場の機能が阻害されて電力価格が高止まりし、新電力は経営の危機に陥り、非効率の発電設備が生き残って再生可能エネルギーの導入が進まなくなるという分析もあります。

この本では、この人為的な「日本版」容量市場の失敗要因について詳細に分析されています。その中で、米国PJMの容量市場との比較、そして容量市場のないテキサス州との比較を行い、今後の日本の電力市場のあるべき姿についても論じられていますので、電力業界に興味のある方は、年末年始に読む一冊にオススメです。

「容量市場の真実 第1回入札の失敗を詳細分析」
はじめに -市場機能で発電設備を活用し、新陳代謝を実現-
第1章 電力市場と日本版容量市場
第2章 容量市場とは何か -日本で検討されたこと-
第3章 あり得ない高価格となった第1回入札 -総額1.6兆円負担の意味-
第4章 米国と本質的に異なる制度 -PJMとどこが違うか-
第5章 容量市場なしで予備力を確保するテキサス州
終 章  容量市場入札総括こそ2050年温室効果ガス排出実質ゼロの出発点

▶︎ネクストパブリッシング
https://nextpublishing.jp/book/12615.html


著者:山家公雄(やまか きみお)
1956年山形県生まれ。東京大学経済学部卒業。1980年に日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。電力、物流、鉄鋼、食品業界などの担当を経て、環境・エネルギー部次長、調査部審議役などを歴任。2009年よりエネルギー戦略研究所所長。2014年4月より京都大学大学院経済学研究科の特任教授。著書として、「テキサスに学ぶ驚異の電力システム」「第5次エネルギー基本計画を読み解く」など。

2020.12.30