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温暖化のニュースで出てくるIPCCとは

●2015年から2018年はもっとも暑い4年間だった

ここ数年、天候を表す時に、「記録的な」とか「データを取り始めた00年以降初めて」という枕ことばをよく耳にします。昨年も西日本豪雨があり、平成最悪の人的被害をもたらしました。

今年に入って世界気象機関(WMO)、米航空宇宙局(NASA)、米海洋大気局(NOAA)という名だたる気象に関する組織が相次いで、2015年から2018年の4年間は、観測史上もっとも暑い年の上位4位までを占めたことを発表しました。このまま温度上昇が続いたら、いったいどうなってしまうのでしょうか。

こうした気候に関する情報を評価し発信しているのが、国連の「気候変動に関する政府間パネル」、略称IPCCです。今回はIPCCとは私たちにとってどんな存在なのかを見ていきたいと思います。

●IPCCの報告書は世界の研究者全員の意見?

IPCCは、人が原因となっている気候変化や影響、それへの適応と影響を和らげるための方策を科学的に評価し報告する組織として、1988年にWMOと国連環境計画(UNEP)によって設立されたものです。その名の通り政府間組織であり、現在は195カ国が参加しています。

IPCCは1988年に第1次評価報告書を発表。その後も約6年おきに新しい報告書を発表しています。IPCCの報告書の最大の特徴は、世界各国から集まった数百人の研究者が相互に内容をチェックし、合意事項としてまとめたものだということです。加えて報告書のチェックでは各国政府も目を通していて、国際的な交渉や各国の政策立案の基礎資料にも使われています。

ただ、IPCCは何か新しい研究をしているわけではなく、発表されている最新の知見、つまり新しい研究を「評価」して、現状を分析することが主な目的の組織です。最新の第5次評価報告書では、参照した論文の数は数万に及び、作業中の報告書案には世界の研究者や政府から14万以上のコメントが寄せられています。これらを80カ国、800人以上の研究者が一つ一つ確認し、再び回覧するという気の遠くなる作業をしてまとめています。ですから、このようにしてつくられた報告書ですから、これは、気象の現状に対する世界の「総意」と言えるかもしれません。

●気候変動の要因は人為的と明言?

では最新の報告書には何が書いてあるのでしょうか。

────気候システムに対する人間の影響は目に見える形で増大しており、その様子はあらゆる大陸で観測されている。気候変動を放置すれば、人間と生態系に対する深刻で広範、かつ取り返しのつかない影響が及ぶ可能性が高まる。しかし、気候変動に適応するための選択肢は残されており、厳格な軽減活動を行えば、気候変動の影響を対応可能な範囲にとどめ、より明るく持続可能な未来をつくることもできる。────

国際連合は、IPCCの報告書の公表に合わせ、このようなプレスリリースでポイントを要約しました。差し迫ったリスクはあるが、きちんと対応していくことでリスクの回避は可能だというのです。

第5次評価報告書では、「気候システムの温暖化には疑う余地がない」と結論付けていますが、この温暖化は、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出など、人間の活動が主な要因だと明確に指摘しています。そして、気温上昇が4度を超えると、「多くの生物種の絶滅、世界及び地域の食料安全保障に対する大きなリスク及び通常の人間活動(中略)を危険にさらす高温と多湿」(原文ママ)が起こる可能性があると警告、かなり強い表現になっています。大きな影響力のある報告書ですから、ここまで踏み込んだ表現をするのは異例のことで、それだけ危機感が強いということでもあります。

例えば低地の場所や小島嶼国、開発途上国などでは高潮や海面水位の上昇などにより健康影響や経済的な被害が発生する恐れがあります。異常気象は先進国にも深刻な被害をもたらします。日本の状況を見てもそれは明らかです。

こうしたリスクを回避するためには、工業化以前の水準に比べて気温上昇を2度以内に抑える必要があると、報告書では指摘しています。そしてその実現に向けて、2040年から2070年の間に、エネルギー供給部門からのCO2排出量を2010年に比べて90%以上削減し、最終的にはゼロにする必要があるとしています。

こんなことが簡単にできるわけもありませんが、ラジェンドラ・パチャウリIPCC議長(当時)は次のように語っていました。

「経済開発と人間開発の継続を可能にする解決策は多くあります。私たちに必要なのは、変革の意志のみです。私たちは、気候変動の科学に関する知識と理解により、変革の意志が高まるものと信じています」(国連プレスリリースより)

●1.5度特別報告書の衝撃

昨年10月、IPCCは「1.5度特別報告書」を発表しました。この報告書では、パリ協定で示された各国の目標を達成しても、3度程度の上昇になってしまうという見通しが示されて、世界に衝撃を与えました。

そして、パリ協定が目指す平均2度の気温上昇に比べると、それより0.5度低い1.5度に抑えることができれば社会への影響が大きく違ってくることも示されました。例えばサンゴ礁は、1.5度の上昇だと70~90%減少しますが、2度の上昇になると死滅すると予想されています。

2度でも大変なのに、気温上昇を1.5度に抑えるにはどのくらいCO2を減らせばいいのでしょうか。報告書では、CO2排出量を2010年から2030年の間に45%減少させ、2050年にゼロにする必要があると記載しています。この目標が達成できれば地球環境にも人間にも大きな利益が生まれるというのですが、道のりは厳しいと言わざるを得ません。

今年2月19日、オーストラリア政府が、グレートバリアリーフに生息していたげっ歯動物「ブランブルケイ・メロミス」というネズミに似た動物が死滅したと公式に宣言しました。これは、人間の活動による気候変動が原因で絶滅した、初のほ乳動物と考えられています(2019年2月19日付AFP電子版)。昆虫などではなく、ほ乳類と聞くとどきっとします。死滅の原因は、ブランブルケイ・メロミスの生息地が、海面上昇によって浸水することが増えたためと考えられています。

(エコイスト編集部)

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