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再生可能エネルギ-はなぜ日本で広がらないのか

再エネ発電は世界的には、既に主力になっており、風力、太陽光を主にコストが急低下し既存技術と遜色のない水準となっている。日本でも、再エネの主力電源化の方向が打ち出されており、その実現のために支援策や課題解決策が議論されている。しかし、海外の先進国に比べてその普及が大きく遅れている。2030年目標の発電電力量に占める再エネ割合をみると、EUは6割超であるが、日本は22~24%である。どうしてだろうか。

基本的に、再エネに対する評価が高くないことである。特に政治家、官僚、産業界、学界といった政策の意思決定に関わる方の認識が弱い。従来より再エネは、コストが高い、天候次第の発電で効率が悪い、エネルギ-密度が小さく多くの面積を必要とするといった「常識」が支配している。知識がある(と思っている)「インテリ」ほどその傾向が強い。長年日本のエネルギ-政策の基本は、先ずは「安定供給」(エネルギ-セキュイリティ)、次に「経済性」である。「環境」は最近出てきたもので、国際世論に従わざるをえないという「やらされ感」がある。

資源の少ない日本は、石油、石炭、天然ガスの化石資源国からの「安定調達」が最重要政策である(今でも)。これらは市況品で価格変動を伴うが、エネルギ-密度が高く、密度が低い再エネに比べて低コストであった。資源エネルギ-庁や商社、電力、重電メーカーは安定調達の主役であった。また、燃料のリサイクルが可能で、一度装荷したら数年間燃え続けるウラン燃料を使用する原子力発電は、ウラン資源は輸入するが「国産資源に準じる安定性」を持ち、また設備費は高いものの稼働中のコストは火力発電よりも低く、しかもCO2を排出しない。この理由で原子力はエネルギ-政策の根幹に位置付けられた。メインプレーヤーも火力とほぼ同一である。一連の費用は、最終的に電気料金にて確実に回収できることから、電力会社を中心に「利益共同体」が形成されていく。彼らにとり、再エネ主力化が実現すると、既存ビジネスが縮小する、既得権益が侵されると感じ、再エネ普及阻止に走ることになる。

一方、地球温暖化問題に敏感で化石資源が少ない国を主に、再生可能エネルギ-の可能性に気が付き、政策として強力に推進することを決断した国・地域がある。EUや米国のいくつかの州であり、最近では中国である。再エネは、エネルギ-密度は小さいのだが、涸渇することがなく燃料費ゼロである。設備費を安くなれば、どこかでトータルコストは火力と同等あるいはそれ以下になる。設備は工場で作るので、規模のメリットが働き、普及度合いとコスト低下が計算できる。

そこで暫くの間政策で再エネを支援して市場を確保する政策がとられる。EUではそれが固定価格買取り制度(FIT)であり、狙い通り、普及とコスト低下の同時達成に近づいている。出力不安定も送電網(ネットワーク)やストレージの利用、水素の製造と利用、熱や運輸とのエネルギ-交換(セクターカップリング)等で対応できることが分ってきた。自給率向上、CO2フリー、新産業の創造という果実を得つつあるのだ。

もちろん、日本と同様に化石燃料、火力発電、原子力発電に関わる既存権益グループは存在する。川上の資源産業も存在するので、より利害関係者は多いといえる。しかし、国策として再エネ推進を決断し、既存関係者を説得した。既存関係者も、再エネ主力化を前提とする新たなシステム、ビジネスに転換していく。日本は、この決断ができずにおり、世界が新しい時代に向けて劇的に変わっていく中で、いまだに「日本は再エネに向いていない論」が幅を利かせている。

日本こそ再エネ主力化に適しているという論が、海外の識者からも上がる。日本は再エネ資源大国であるという理由だ。長い海岸線や広大な領海は膨大な海洋エネルギ-や風力資源を生む。降水量が多く、火山国であり地熱資源は世界で3番目に多い。国土の7割は森林で覆われ膨大なバイオマス資源がある。著名な環境学者エイモリーロビンズ氏は、日本の再エネ資源はドイツの9倍あると試算している。

この政治・政策の決断ができないままに、既存システムとの軋轢が多く残っており、普及の速度は遅い。FIT等の再エネ支援制度がふら付いている、送電線利用に関する既得権限が残っている、既存事業者が発電設備をほぼ独占している状況である。電力自由化政策に舵を切ったものの、未整備なのだ。世界動向に向き合いこれを素直に受け入れ、政策転換を決断しないと、その差は開くばかりである。

エネルギ-戦略研究所株式会社 取締役研究所長 
(京都大学経済学研究科特任教授)
山家公雄

〈プロフィール〉
山家 公雄(やまか・きみお)
1956年山形県生まれ。東京大学経済学部卒業。1980年に日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。電力、物流、鉄鋼、食品業界などの担当を経て、環境・エネルギー部次長、調査部審議役などを歴任。2009年よりエネルギー戦略研究所所長。2014年4月より京都大学大学院経済学研究科の特任教授。著書として、「テキサスに学ぶ驚異の電力システム」「第5次エネルギー基本計画」を読み解く」など。

2020.02.20