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「見上げる森」を作る建築家

 森といえば広く見渡すもの。ところが近年、海外の都市に垂直に伸びる「見上げる森」が出現しています。「ヴァーティカル・フォレスト」と呼ばれるこの都市に生まれた森は人が住む住宅建築です。

 イタリアの建築家ステファノ・ボエリさんがミラノに建てた二つの住宅用タワーは、それぞれ80メートルと112メートルと超高層です。この建物に約2万本の樹木や低木、草花が植えられています。これは平面にして、約2万平方メートル以上の森林に相当するといいます。これらの植物が年間30トンの二酸化炭素を吸収し、19トンの酸素を生み出します。このヴァーティカル・フォレストは2018年、世界で最も優れた新築ビルを表彰するRIBA国際賞でファイナリストに選ばれました。

 ボエリさんはCNNの取材に「私たちが住む都市やその周辺の緑地を拡大することは、気候の変化を元に戻すのに最も効率的な方法の一つです。ヴァーティカルフォレストは動植物が住む世界を水平垂直的に広げる一つの方法なのです」と語りました。いわば、それ自身が呼吸をする一つの有機体のような建造物。各フロアには15種以上の野鳥も生息しているといいます。

 ボエリさんはこの建築プロジェクトの成功について、ヴァーティカル・フォレストの考え方が世界に広まることにあると強調します。既にイタリアのトレビソ、スイスのローザンヌ、オランダのユトレヒトなどヨーロッパの都市で、新たな計画を発表しています。また広西チワン族自治区柳州では、2020年に完成予定の「フォレストシティ」のマスタープランを手掛けています。約140万平方メートルに及ぶ住居や病院、学校、官公庁が植物に覆われる、都市を丸ごと森にする壮大な計画です。

 こうした計画には、それぞれの場所において、どんな植物や木が繁茂するのかを把握するための調査が必要だといいます。湿度、風、日光という変数は難しく、ミラノの住宅用タワーをオープンするにあたり、ボエリさんは異なる植物の成長を二年間観察したといいます。その上で、成長の度合いが良好と証明されたものだけを使いました。

 緑に飢えた都会の人間にとって、ヴァーティカル・フォレストは魅力的な物件に思えます。ただ世界的な建築家が作る住居に一般の人が住めるのでしょうか、なんて考える人もいると思います。ボエリさんはその点についても意欲を示しています。オランダの都市アイントホーフェンで、公営住宅として、ヴァーティカルフォレストのコンセプトを元にした19層125ユニットからなるタワーが建設予定だそうです。「樹木や植物の数を減らすことなく、建設コストを減らし、ファサードにプレハブを使いました。これからの都市が抱える気候変動と貧困という2つの主要な問題をまとめて解決することが可能であると示したいと思います」とボエリさんは話しています。

 ヴァーティカルフォレストは今後、世界中の都市に広がる可能性が高いといえます。その一つの根拠が、ボエリさんが著作権を放棄していることです。「私たちはいかなる著作権も放棄するよ。この建物の社会的価値を知っているからね。私たちと同じ哲学に基づいて建物を作る建築家や都市計画家が出てくるでしょうし、実際にもう出てきています。私はそれを嬉しく思います」。社会的な価値を独占せず、共有しようとするボエリさんの考え方にはサステナブルな生き方が見てとれます。

Source: https://edition.cnn.com/style/article/riba-vertical-forest-stefano-boeri/
Photo:CNN Style

(エコイスト編集部)

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