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コバルトを使用しない新たな電池

 リチウムイオン電池の発明によって、スマートフォンやパソコンなど、電化製品は格段に薄く小さくなりました。その研究と開発で日本の研究者吉野彰さんがノーベル化学賞を受賞したのは記憶に新しいところですが、このリチウムイオン、まだ課題が残っていることをご存知ですか。

 一つは素材の供給に関する問題。リチウムイオン電池を作るためには、レアメタルと呼ばれるコバルトなどの重金属が必要ですが、世界のコバルトの埋蔵量、生産量ともにその半分がコンゴ民主共和国にあるとされています。ところが同国は1998年の内戦の影響で今も政情が不安定。加えて、採掘に子どもが関わっているとして、児童労働の問題にもつながっています。さらに、枯渇が懸念される天然資源であるため、持続可能性の面でも採掘が批判の対象となっています。

 二つ目は廃棄の問題。破損や変形によって、発熱し、発火する危険性が高く、身近なところでは、不燃ごみや粗大ごみの中に残されたリチウムイオン電池が原因で火災が起きるなどしています。この発火性は、電気自動車や新型航空機の開発においても課題となっており、研究が今も重ねられています。

 こうした問題を前に、IBM Researchは原材料にコバルトを使用しない、リチウムイオン電池とは異なる新たな電池の開発を発表しました。コバルトの代替材料となるのは、なんと海水から抽出する素材といいます。これにより、現在の鉱山採掘よりも環境への負荷を減らすことができ、同時に供給の不安定性から解放されることで、コストの低減も見込めるとのことです。

 また、この素材を用いた新たな電池の設計は、従来のリチウムイオン電池に比べて、多くの点で性能を上回る研究成果が出ているといいます。まずは課題であった発火性。難しい専門用語になってしまいますが、カソードと呼ばれる電極に新たな素材を使い、引火点の高い安全な電解質を採用することで、発火性が低減されたといいます。この他、充電時間の短縮や、出力密度、エネルギー密度、エネルギー効率といった点でも、優位性が確認できたそうです。

 IBM Researchは既に、このバッテリーを実用化するため、メルセデス・ベンツの米国研究部門とバッテリーメーカーのSidus、電池電解液メーカーのセントラル硝子と協力関係を結び、開発を進めているといいます。大規模な開発に関わる計画はまだ試験的な段階だといいますが、公式に発表したことで、各業界の動きが活発になると見込まれます。

 IBM Researchの研究チームはこの電池の開発にあたり、安全で性能のよい材料を特定するために、人工知能(AI)技術を活用したとのことです。現在直面している課題を解決することにAIに貢献させるというのも、IBM社ならではのリソースを軸にしたCSVと言っても良いかと思います。

※CSV (Creating Shared Value):企業が通常の事業活動を通じて社会的な課題を解決し、「社会価値」と「企業価値」を両立させようとする考え方。「社会的問題・課題解決のビジネス化」ともいわれます

Source: https://www.ibm.com/blogs/research/2019/12/
Photo:ecoist

(エコイスト編集部)

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