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テキーラ原料でバイオマス発電

バイオマス発電は再生可能エネルギー、と聞いてすんなり納得がいく人は少ないのではないでしょうか? 燃料となる農作物などは、成長する過程でCO2を吸収しているので、エネルギーを作るために燃やしても、地球全体のCO2の総量はプラスマイナスゼロだと考えられています。これはカーボン・ニュートラルという考え方で、バイオマス発電が再生可能エネルギーである根拠とされています。とはいえ、もっとシンプルに太陽や水、空気といった自然の恵みが生み出した作物をエネルギーとして使うのですから、それは再生可能なエネルギーなのだ、と理解しても良いかもしれません。

そんなバイオマス発電ですが、その発電方法は様々です。その一つに農作物からバイオエタノールを作り、ガソリンと混ぜて使うバイオガソリンという手段があります。現在は主に、トウモロコシやサトウキビが使われているのですが、シドニー大学の研究チームがこの春、テキーラの原料として知られるアガベという作物の方が、より環境への負荷が小さいと発表しました。

しかし、’’環境への負荷が小さい’’と一口に言っても、説明するのはそう簡単ではありません。アガベがトウモロコシやサトウキビに勝るのは少し複雑な理由によるからです。まず第一に、栽培するのに水をまく灌漑設備を作る必要がないということ。アガベの原産地は中南米のメキシコ。暑さと干ばつに強く、淡水や肥料をそれほど必要としないのです。アガベはサトウキビに比べて69%、トウモロコシに比べて46%少ない水の量で栽培できるという研究結果が出ました。

次に、雨量の少ないオーストラリアでも生産できるという点。つまり、オーストラリアにとっては外国から輸入する必要がないということです。現在バイオエタノールの原料としてのサトウキビの最大の輸出国はブラジル、トウモロコシはアメリカです。輸入が必要だったものが、自国で生産できるとなれば、輸送にかかるCO2排出量を削減できます。これが少し複雑だとお話しした理由で、自国でアガベを栽培できない国にとっては、輸入する必要が出てくるので、アガベは環境への負荷が小さいとは言えない可能性があります。

続いて三点目、アガベのメリットは食料作物と競合しないことです。トウモロコシやサトウキビは人間の食料になるだけでなく、飼料作物として家畜の餌にもなります。アジアの国々の人口増加や異常気象による農作物の不作によって、バイオマス発電に使われるはずだった作物が、食料に振り分けられる可能性がないとはいえません。つまり、相場が不安定になってしまうのです。一方アガベはテキーラの原料にはなるものの、基本的には食用としては使われないので、相場が安定しているといえます。

最後に、どれだけエタノールを取り出すことができるかですが、アガベは1ヘクタール当たり7414リットル。対して、サトウキビは9900リットル、トウモロコシは3800リットルでした。収量だけを見ればサトウキビがもっとも効率的です。しかし、これまで見てきたように、作物の栽培からエタノールの生成へと至る全工程の環境への影響評価をみると、アガベの方がバイオマス発電には適しているということが分かったというのです。生産工程の環境への影響評価はライフサイクルアセスメントといい、今回紹介した以外にも、淡水の富栄養化や海洋汚染などの評価項目があります。

では、オーストラリアですぐにアガベの生産が始まるかというと、そういうわけでもないようです。シドニー大学の研究者は「行政の支援なしでは、商業的にはまだ成り立たないだろう」とのこと。しかし、現在パンデミックとなっているコロナウイルスへの対策として、消毒用のアルコールの需要が増えていることもあり、状況は変わるかもしれないとの情報もあります。ウイルスの流行によって世界中の都市の様相が一変していますが、変化はエネルギー業界にも及びつつあるのかもしれません。

Source:https://www.sydney.edu.au/news-opinion/news/2020/04/02/
Photo:agave

(エコイスト編集部)

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