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消費期限を延ばすシルクコーティング

夏は食べ物が腐りやすい季節。消費期限が過ぎていると気付き、食べ物を捨てた経験は誰しもあるはずです。生鮮食品の鮮度が数日間長くなるだけで、どれだけの生ごみや新たに買うことになる食べ物の余計な出費が抑えられるでしょうか。そんな夢のような発想が、現実のものになるかもしれません。

米国のケンブリッジ・クロップス社が、生鮮食品の保存期間を伸ばす無味無臭で食用可能なコーティング技術を発表しました。冷やしたり、プラスチックで保護したりする代わりに、絹のタンパク質を食品の表面に塗布することで、乾燥や酸化を防ぐといいます。食品を長期保存するためのプラスチック製包装材料に取って代わる可能性が大きいことで、注目を集めています。

シルク・コーティングと呼ばれるこの技術。実は、ある偶然によって見つかったそうです。同社の設立者ベネデット・マレリ助教授が所属するマサチューセッツ工科大学の発表によりますと、それはマレリ氏が所属していた研究施設で開かれたある風変わりな料理コンテストにおいてのこと。コンテストの要件は料理に絹を使うことで、マレリ氏はイチゴを絹に浸すことを試みていました。コンテストの結果は定かではありませんが、マレリ氏は不注意からイチゴを作業台の上に一週間置いたままにしてしまったといいます。気付いた時には当然腐っているものと思われたイチゴですが、絹に浸したイチゴは食べられる状態でした。一方、絹に浸していなかったイチゴは完全に腐っていました。

それまで絹の生体医学的な研究をしていたマレリ氏ですが、この発見をきっかけに食品廃棄物問題を解決する手段としての絹の研究をスタート。ボストンを拠点とする数名の科学者と協力して、ケンブリッジ・クロップス社を設立、絹の主成分を使ったコーティング技術を開発しました。イチゴ以外の他の食材でも同様の現象を確認し、肉や魚といった生鮮食品の消費期限を長くすることができるとしています。

シルク・コーティング技術は、工場への高額の設備投資や改造などを必要とせず、既存の食品加工ラインに簡単に組み込むことができるといいます。食品によっては、消費期限が最大200%延びる結果も出ており、食品廃棄物だけでなく、プラスチック製品や生鮮食品を運ぶ冷蔵車が排出する温室効果ガスの削減にも期待が持てます。

生鮮食品を多くの人が食べられるように、これまで多くの研究が積み重ねられてきました。しかし、遺伝子工学や植物工学、機械工学、AI、コンピュータサイエンスなどに基づいた研究は、結果的に遺伝子改変や環境に有害な包装材料などを生み、社会に弊害も起こしてしまいました。マレリ氏は、今回発見した絹のようなナノ材料や生体材料を使えば、食品そのものの特性を変えることなく、食品業界が直面する多くの問題を緩和できるといいます。プラスチックのような自然界にはないもので保護するのではなく、有機物の作用によって食品を守るという柔らかな発想は、自然との共生が求められるこれからの時代にフィットしそうです。

Source:http://news.mit.edu/2020/mit-based-startup-cambridge-crops-wraps-food-in-silk-0605
Photo:Massachusetts Institute of Technology

(エコイスト編集部)


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