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「未来の肉」で作られるチキンナゲット

コロナウイルスの流行により世界中が混乱のさなかにありますが、鶏の社会はこれまでに何度もパンデミックを経験してきました。殺処分などが度々ニュースとなる鳥インフルエンザです。ウイルスが増殖する原因としては、飼育密度の高い工場型の養鶏場が温床になっていると言われており、動物福祉の観点からも批判されている密飼いはやめようという動きが少しずつ広まっています。鶏のストレスを減らしてあげることは、「可哀想」という感情的な理由からではなく、エシカルな行動といえるのです。

では養鶏のストレスを減らすには、どのような方法があるのでしょうか。究極的な答えを挙げるとすれば、それは鶏を飼わないことかもしれません。ずるい答えかもしれませんが、実際にロシアのケンタッキーフライドチキン(KFC)は7月、「未来の肉」として、3Dバイオプリント*の技術を駆使してチキンナゲットの材料を研究室で生産するプロジェクトを発表しました。2020年秋の販売を予定しているといいます。

KFC Russiaの発表によりますと、「未来の肉」のアイデアは、健康的なライフスタイルの人気の高まりや代替肉の需要の増加、より環境に優しい食品生産方法を開発する必要性など、さまざまな時代のニーズによって生まれたといいます。同社はロシアの民間医療企業INVITRO社が設立した研究ラボ「3Dバイオプリンティングソリューションズ」と協力し、技術開発を進めています。

コンピュータ上で作成した立体物のデザインを簡単に出力できる3Dバイオプリントは、もともと再生医療の研究など医療分野での導入が進められてきました。近年、その応用として牛の幹細胞を培養してハンバーグを作ったり、鯨の細胞から鯨肉を作ったりといった研究が増加。KFCのプロジェクトでは、ニワトリの細胞と植物材料を用いたバイオプリンティング技術を使い、鶏を育てて殺すという従来の食肉の生産過程を経ることのない「未来の肉」を作ろうとしているのです。

現在の食肉の生産工程では多くの飼料添加物が使われています。飼料の品質の低下を防いだり栄養摂取を促進したりするために、抗酸化剤や防カビ剤、乳化剤、合成抗菌剤や抗生物質などさまざまな添加物が使われているのです。また、米国環境科学技術ジャーナルの研究によりますと、細胞から肉を育てる技術は、環境への悪影響を最小限に抑え、エネルギー消費量は半分以下、温室効果ガスの排出量も従来の食肉生産の25分の1に、使用する土地を100分の1に削減できるといいます。こうした理由から、3Dバイオプリントで作られた食肉はクリーンでエシカルな代替肉になる可能性が高いと考えられています。

KFC Russiaゼネラルマネージャーのライサ・ポリアコワ氏は「3Dバイオプリント技術で鶏肉製品を作る研究は、迫り来る地球規模の問題の解決に役立つはず」と話します。ecoistでも様々な代替肉に関するニュースをお伝えしているように、代替肉を食べる機会はより身近になっていくと考えられます。当然、抵抗がある方もいらっしゃるかもしれません。そうした方は、劣悪な環境で育てられている食肉の現状について調べてみると考え方が少し変わるかもしれません。

*3Dバイオプリント:様々な細胞に分化することが可能なiPS細胞(人工多能性幹細胞)に基づく3次元生体組織の構築を3Dプリンターの技術を用いて、より生体に近い組織作製を実現するものです。再生医療や新しい薬の開発を含め、様々な研究開発が加速的に進められています。

Source:https://global.kfc.com/press-release/
Photo:KFC

(エコイスト編集部)


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