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“アップサイクル”の考え方から誕生したライフジャケット

 自動車のエアバッグは、事故があった時に運転手や同乗者の命を守る大切な部品です。ところが、車に搭載されたエアバッグのほとんどが、一度も役目を果たすことなく廃棄されていることをご存知でしょうか。

 現在、廃棄される自動車の素材のうち、90%はリサイクルできるそうです。しかし、エアバッグやシートベルトについては有効な活用手段がなく、ごみとして焼却処分されてきました。特にエアバッグは未使用のものでも安全上の理由で再利用が難しく、廃棄されてきたそうです。

 そんなエアバッグを再利用する取り組みが始まりました。山形県の環境関連のNPO法人などからなる市民団体「ドリームやまがた里山プロジェクト」は、廃棄自動車から取り出したエアバッグ、シートベルト、また、使用済みの発泡スチロール箱を再利用して、ライフジャケットを作りました。この団体は、地元である山形県の経済的・文化的価値を積極的に発信し、地方創生に繋げていくことを目指しています。

 材料となる自動車廃材は、県内ディーラー全18社が出資する、山形県自動車販売店リサイクルセンター株式会社から調達しました。エアバッグは糸をほどきオレンジ色に染め、留め具にはシートベルトを使用。浮力材として採用した使用済みの発泡スチロール箱は、県内の生活協同組合などから無償で譲り受けたものです。

 そして、このエアバッグの製造には身障者の方々も活躍しています。作業を担当したのは、山形市のNPO法人「山形自立支援創造事業舎」の利用者。エアバッグから一本一本糸を抜いたり、発泡スチロールをライフジャケットに合う形に成形したりと、材料を極力無駄にしないよう、丁寧に手作業で作り上げたそうです。

 また、このライフジャケットは、エアバッグや発泡スチロールのリサイクルといった目的のほかに、もう1つ重要な役割を担っているのです。それは、海や川での水難事故ゼロを目指して、ライフジャケット着用向上のイベントを開催し、啓発することです。ライフジャケットは、着用することで水難事故の際の生存率を大幅に上げることができますが、正しく着用しなければ性能を発揮できません。プロジェクトはこれまで、県内各地で啓発イベントを実施し、100着のライフジャケットを無料配布しました。

 プロジェクトが目指すものは、単なるリサイクルやリユースとは異なり、不要になったものを元の形状や特徴などを活かしながら、新しいアイディアを加えることで別のものに生まれ変わらせる、“アップサイクル”というサスティナブルな考え方です。人の命を守っていたエアバッグは、廃材として役目を終えるのではなく、ライフジャケットという別のかたちで、海上で人命や生物を守っていくことになります。このライフジャケットのような、アップサイクルなものや考え方が広がっていくことで、循環型社会の実現に近づいていくのでしょう。

Photo: ドリームやまがた里山プロジェクト

(エコイスト編集部)

2019.11.21